2025年7月22日
こんにちは。ふくしま皮膚科・美容皮膚科です。
今回は、夏に特に多い「汗」に関するお悩みについてお話しします。
「脇汗が服ににじんでしまう」
「顔だけ異常に汗をかく」
「手汗で書類が濡れる、人前で手を出せない」
このようなお悩み、実は治療できる「多汗症」という病気かもしれません。
今回は多汗症の特徴と当院で行っている治療についてご紹介します。
なぜ夏は汗の悩みが増えるのか?
汗は体温調整に不可欠ですが、夏は気温と湿度の上昇に加え、暑さによる不快感やマスク着用、ストレスや緊張などによる「精神的発汗」も加わって、汗のトラブルが増加します。
また、汗によるムレや摩擦があせもや湿疹、ニキビなどの皮膚トラブルを引き起こすこともあります。汗の「量」だけでなく、「におい」や「不快感」といった面でも、生活の質に大きく影響することもあるため、「仕方がない」と諦める前に一度皮膚科にご相談ください。
「多汗症」の診断基準とセルフチェック
「汗が多い=体質」と思い込みやすいですが、実は明確な診断基準と重症度評価があります。
◆「原発性局所多汗症」の診断基準
以下のすべてを満たすと診断されます(日本皮膚科学会ガイドラインより)
・明らかな原因がないのに、局所的に発汗が6ヶ月以上続いている
・以下の6項目のうち2つ以上に該当している
① 発症が25歳以下である
② 左右対称に発汗がみられる
③ 睡眠中は発汗が止まっている
④ 週1回以上の頻度で発汗がある
⑤ 家族歴がある
⑥ 日常生活に支障がある
特に手汗や脇汗でお悩みの方は、これらに当てはまることが多く見られます。
◆HDSS:重症度のセルフチェックスケール
HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)は、汗の症状が日常生活にどれほど影響を与えているかを自己評価する尺度です。
・HDSSスコア
1:発汗は発汗は全く気にならず、生活に支障がない
2:発汗は我慢できるが、時々支障がある
3:発汗はほとんど我慢できず、頻繁に支障がある
4:発汗が耐えられず、常に支障がある
※HDSSスコアが3以上の方は、保険適応の治療が可能です。
診察時に簡単な質問で確認できますので、気になる方はぜひご相談ください。
「多汗症」の治療について
多汗症は治療可能な疾患です。
当院では、症状の部位や程度に応じて、以下のような治療法を行っています。
◆保険適応の治療
◯外用薬
・脇汗:日本初の外用薬である「エクロックゲル®」や使い切りタイプのシートで外出先でも使いやすい「ラピフォートワイプ®」が使用できます。
・手汗:手のひらの多汗症に特化した新しい治療薬である「アポハイドローション®」が使用できます。
◯内服薬
・プロバンサイン®(一般名:プロピベリン塩酸塩)
自律神経に作用して汗の分泌を抑える薬です。顔汗や手汗、全身性の多汗症など、外用薬で効果が不十分な場合や広範囲の発汗に悩む方に使用されます。副作用としては口の乾きや眠気などが出ることがありますが、用量を調整しながら安全に使えます。ただし、小児に対する安全性と有効性は確立していないため、原則15歳未満の子どもには使用を避けるべきとされています。
◆自費の治療(ボトックス注射による多汗症治療)
ボトックス注射は、多汗症に対して非常に効果的な治療法のひとつです。特に、外用薬や内服薬では十分な効果が得られない場合や、すぐに症状を改善したい方に適しています。また、一度の注射で3〜6ヶ月程度効果が持続するため、毎日の外用薬や内服薬の使用が負担となる方にもとても便利です。
当院では、主に「脇汗」に対してボトックス治療を行っておりますが、「顔(頭)汗」や「手汗」、「足汗」についても個別に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
まとめ:汗の悩みも皮膚科で相談できます
汗の悩みはとてもデリケートで、一人で抱え込んでしまいがちです。
しかし、正しく診断し、適切に治療することで生活の質は大きく向上します。
それぞれの部位や症状に応じた治療や対策をご提案できますので、「こんなことで受診していいのかな?」と迷わず、お気軽にご相談ください。